流産

待望の妊娠にもかかわらず、残念ながら流産に終わってしまうことがあります。しかし、流産は全妊娠の8-20%におきるとされており、珍しいものではありません。1度の流産の場合、必ずしも次回の妊娠も流産というわけではありませんので、次回に期待していただきたいと思います。
流産といっても切迫流産、進行流産、完全流産、不全流産、稽留流産など臨床的にはいくつもの種類があります。

原因

原因はこの欄では書ききれないほどありますが、一番多いのは胎児の染色体異常で初期流産の50-60%とされています。その他、子宮の異常、黄体機能不全、糖尿病など内分泌異常、感染症、免疫異常、精子の異常などです。
よく耳にする切迫流産というのは胎児が死亡した状態ではなく、出血などの症状があるものの、胎児がこれから正常に成長して行く可能性がある状態です。少量の出血や下腹痛などがみられる場合に切迫流産という診断名を付けますが、実際流産してしまったことではないので誤解しないでいただきたいと思います。出血があっても、その後は順調に胎児の成長が見られ、元気な赤ちゃんが生まれることも多いのです。

症状

流産の症状としては出血を認めることが多いのですが、稽留流産(超音波で胎芽または胎児が子宮内で死亡しているのが確認されたが、出血などの症状がない場合)のように全く出血を認めないこともあります。出血していても心拍が確認されれば流産する可能性は低くなります。流産の出血の量は微量から大量までさまざまです。
近年は超音波診断装置が発達してきていますので、出血のような症状を認めない時期に流産の診断がついてしまうことが増えてきています。つまり、流産の中では先に述べた稽留流産が増えてきています。流産というと出血がつきもののように思われていますが、超音波装置で妊娠6-7週以降で胎児の心臓の拍動の動きが観察されなければ、流産の診断がつきます。出血などの症状がなく、つわりもある時など、流産と診断されても納得されないこともありますが、妊娠の週数が明確な場合は超音波による診断は正確です。超音波診断装置が普及する前は胎児の心音が聴こえる時期である妊娠11-12週まで診断がつかず、多量の出血によりようやく診断されることもありました。

治療

切迫流産の場合は、治療は安静が基本ですが、実は安静に関しても、有効であるというはっきりしたデータはありません。流産を止める特効薬はありません。原因の多くが染色体異常であり、染色体を薬で変えることはできないからです。薬物療法では妊娠16週以降の切迫流産の場合は子宮収縮抑制剤を使うことがあります。初期には以前使われたホルモン剤の注射は最近はあまり使用されなくなりました。もし、胎児が認められるものの心拍が確認されない進行した出血のある流産であれば子宮内容除去術を行なわなければ出血が持続します。ただ、胎嚢(たいのう)も見られない状態での流産の場合は手術をしないで、そのまま経過を見ます。生理位の出血量で終わると思います。

夜間、妊娠しているにもかかわらず出血してきた、という場合にはあわてないで下さい。初期の場合には、先に述べましたように、流産を止める治療法はありませんので、病院に来られても超音波でみるくらいで、処置はありません。むしろ車に揺られて長距離を移動する方が流産を進行させてしまうことがありますので、生理の多い時以上の大量の出血でなければ、家で安静にしている事が一番です。まず、静かにして落ち着かせておいて、診療開始時間後に病院に連絡して下さい。

はじめに流産は必ずしも繰り返さないとのべましたが、続けて2回流産した場合は反復流産とされ、3回目も流産する習慣流産になる可能性が高くなりますので、原因を知るために検査を受けていただきたいと思います。

参考:
1.産婦人科研修の必須知識 2007(日本産科婦人科学会編)
2.UpToDate Gynecology & Obstetrics(USA)