人工授精

当院で行う新しい人工授精(AIH)について

人工授精とは、子宮内に直接、精子を注入することにより、卵管に多数の精子が到達しやすい状態にし、卵と受精する機会を増やす方法です。
人工という言葉がつきますが、簡単に言うと子宮内に精子を多数送り込むだけの手技であり、体外受精に比較すると、極めて単純な手技です。
当院では、精子の洗浄・濃縮法を行っており、採取された精子を洗浄した後、濃縮して、濃度の濃い精子を子宮内に注入しております。採取された精液をそのまま注入すると、細菌やゴミまで子宮内に注入されることがあり、また、十分な数の精子を注入できません。精液は通常2ml以上射出されますが、子宮内に注入する量は、0.3ml程度です。つまり、濃縮しない場合には、2ml射出されても注入されるのは0.3mlですので、採取された精子の10分の1程度しか子宮内に注入されないことになります。洗浄・濃縮法では、採取された精子で元気のいい精子はすべて子宮内に注入されますので、卵管、卵に到達する精子の数が増加し、妊娠率は高くなります。
人工授精は卵管の通過に異常がない場合に行われます。1回の人工授精の成功率は5-10%と言われており、それ程高い成功率ではありません(当院では約15%の妊娠率です)。しかし、人工授精を行わなければならないような方は、人工授精をしなければ妊娠率はさらに低いものとなり、3年間不妊の方はタイミングでは1周期あたり2%しか妊娠しないとされています。98%の方はタイミングだけでは妊娠しないことになります。また、イギリス産科婦人科学会のガイドラインでは、妊娠を希望してから2年間で92%の方が自然しますが3年間では93%、と2年目から3年目にかけては1%しか増えません。人工授精に進むことにためらっている方も時にいらっしゃいますが、上記のように2年以上妊娠しない場合はタイミングだけでは妊娠率は非常に少ないことも知っておいて頂きたいと思います。
人工授精は5-6回までは回数が増える毎に累積妊娠率は上昇しますが、それ以上の回数では妊娠することはあまりなくなります。つまり、5-6回の人工授精を行っても妊娠しない場合には、それ以上行っても妊娠する確率は非常に低くなるという論文が数多くあります。当院でも同様の結果でした(下記グラフ参照)。人工授精の回数は不妊期間、年齢なども考慮し、決めた方がいいと思います。通常は5-6回で妊娠しない場合には体外受精に進みますが、不妊期間が3年以上の場合や38歳以上の場合は3回ほどで体外授精に進む事も考えた方がいいかもしれません。排卵誘発剤を使用しながら人工授精を行うと、妊娠率が2倍ほど上昇することはいくつかの論文から明らかになっています。
人工授精を行っても妊娠しない場合の原因としては子宮卵管造影では明らかではない卵管周囲の癒着や、卵管が卵子を取りこむピックアップ機能の低下、受精障害などが考えられます。人工授精の次の段階の治療としては体外受精になります。

・費用は自費になりますので当院では現在1回12,000円です(年々新しい調整液が開発されますので、費用が変わることがあります。東京では2万円程度かかる最新の濃縮液、調整法です)
・洗浄・濃縮に20-30分前後程度の時間がかかります。
・人工授精時に診察台に上がる時にお名前をお聞きしますので、氏名をお教え下さい。確認のため、何度かお聞きすることがありますが、ご了承下さい。
・人工授精を行った後は、診察台上で5分ほど安静にしていただきます。その後は普段と同じ生活をしてかまいません。
・注入の痛みはほとんどありません。
・当日精液が採取できない場合には、前もって精液を採取し、洗浄濃縮後、精子を凍結保存する方法もあります。凍結精子の人工授精の方が妊娠率が高いとの報告もあります。これも当院では常に新しく開発された凍結液を使用しています。
・精子数が少ないため体外受精になるような例も、当院ではこの凍結精子による人工授精を行い、体外受精せず妊娠した例も多くあります。
・凍結保存には、特殊な凍結保存液の使用や、保存、保管のため別途料金がかかります。凍結保存液の使用に関しては精子への悪影響はありません。ただし、融解した場合、精子の半数近くほどが死滅しますので、数が減少します。しかし、その死滅した精子はもともといい精子ではなく、逆に生き残った精子の運動率はよくなり、これが妊娠率の上昇をもたらしている可能性があります。
・人工授精の後は抗生物質の薬を2日間服用して、感染を予防いたします。

人工授精の累積妊娠率

(人工授精で妊娠する場合は、6回までに90%以上の方が妊娠します。それ以上行っても妊娠する例はわずかになります。6回までに妊娠しない場合はステップアップを考慮します。
しかし、年齢、卵管の状態により、少ない回数でもステップアップを考慮することがあります。)