体外受精と人工授精

体外受精とは

1978年に世界で最初の体外受精児がイギリスで出生して以来、世界で年間十万人以上の体外受精児が出生しています。我が国でも東北大学で成功して以来、全国各地で体外受精が行われるようになり、年間約20,000人の体外受精児が日本でも出生しております。体外受精による出生は年々急増しており、2017年のデータでは本邦の出生児の19人に1人は体外受精児でした。体外受精は決して珍しい治療法ではなくなりました。

この体外受精が行われるようになってから不妊症の治療は飛躍的に進歩し、今までは子供を生むことをあきらめなければならなかった夫婦に体外受精という方法は新たな道を開きました。
では体外受精はどのような症例に対して行われるのでしょうか。
それはa.卵管が閉塞している人、手術などで卵管がない場合、b.精子の数が少ない場合、c.不妊症の治療を数年行っても妊娠しない場合などが対象となります。どのくらいの期間妊娠しない場合に体外受精に進むかは年齢にもよります。
体外受精の実際の方法は高度生殖医療のページをご覧下さい。

体外受精の成功率
体外受精の成功率は1周期当り25-30%程度とお考え下さい。非常に正確な統計とされている最新(2007年)のヨーロッパ各国の合計では、1回の採卵当りの妊娠率は26.1%となっております。女性の年齢などにより個々人の率は変わります。高年齢の方は成功率は低くなります。

各施設の 成功率を比較することは難しいこともご承知おき下さい。若い人の体外受精が多い施設では成功率は高くなりますし、自然のタイミングまたは人工授精で充分妊娠が期待できる方にも体外受精を行えば、当然成功率は高くなります。また、妊娠する可能性が低い例は行わないという方針であれば、これも妊娠しやすい例だけ体外受精を行うことになるので、成功率は高くなります。ですから成功率の数字は、各施設でどういう例に対して体外受精を行っているのかということで変わりますので、施設間の成功率の比較は当てにならないのです。
以上のように、体外受精1回では妊娠しない方の方が多く、70-75%の方は1回では妊娠しないということになります。私たちは当然1回目で妊娠するよう全力を上げてお手伝いしますが、移植する際に良好な受精卵の確実な選択は現在の医学レベルでは困難な状況です。ちなみに、夫婦とも健康で異常がない場合に、排卵日に性交したとしても妊娠する率は周期あたり25%程度とされており、体外受精の成功率とほぼ同数字です。

染色体異常

参考までに、体外受精の場合、少なくとも50%の胚が染色体の数的やその他の染色体異常が認められるとされています。北アメリカでは35-37歳の体外受精を受けた女性の胚で70%が染色体異常であったという報告もあります。さらに40歳以上では 82%に達するという報告もありますし、妊孕性が確認されている比較的若い女性の卵でも50%以上の胚で染色体異常が認められています。
染色体異常がある胚は妊娠までに至りませんので、顕微鏡で見た目にはいい受精卵であったとしても、実は半分は染色体の異常があり、妊娠につながらないという結果になります。異常のない胚が妊娠に至りますが、児の異常の発現は少なく、通常の妊娠とほとんど差はないことが分かっています。
以前は人工的に操作する体外受精に対して批判もありましたが、現在ではほとんど聞かれなくなってしまいました。これは手技的にも確立されてきたことが認められ、体外受精によつて恩恵を受けた人が多くなったためと思われます。また、1978年に世界で最初に体外受精に成功したイギリスのエドワード教授は、2010年のノーベル生理学賞・医学賞を受賞しました。このことは成功当初は批判の多かった体外受精が安全性の確認された手技であるということが認められたためだと思います。

人工授精

体外受精と人工授精の違いがよく理解されていない方がいます。人工授精は古くから行われている方法で、精子を直接子宮の中に入れる簡単な方法です。当院の方法はより元気な精子を選別し、不用な白血球や細菌を除去した精子を注入しています。精液は自宅で採取、もしくは当院の採精室で採取してもらいます。人工授精は頚管粘液の分泌が悪い人、精子の数が若干少ない人、一般不妊治療を行ってもなかなか妊娠しない人などに行います。人工授精はこれらの人の妊娠率を上昇させますが、ご主人の理解がないと行えません。精子が非常に少ない場合、体外受精になることが多いのですが、当院では精子を数回分凍結し、それらをまとめて融解し、人工授精を行うこともあります。人工授精の当日にご主人の都合が付かない場合にも前もって凍結しておいた精子による人工授精も行っています。しかし、人工授精は卵管が閉塞している場合や精子の数が非常に少ない場合には適応ではありません。体外受精の適応となります。