妊娠しやすい体になるためには

1.喫煙習慣・・禁煙が妊娠率を高めます

a.喫煙習慣は生殖機能を脅かします。喫煙が卵巣機能にとって有害であることは数多くの研究結果から明らかであり、卵巣機能の障害の程度は喫煙量と喫煙期間に依存すると考えられています。喫煙者がすべて不妊になるということではありませんが、統計上、下記のように妊娠しにくい体になります。
b.煙草に含まれるニコチンや他の有毒化学物質が排卵に関係する女性ホルモンである卵胞ホルモンや黄体ホルモンの産生を抑制し、また卵子の遺伝子異常を引き起こします。このため、卵胞閉鎖する過程が加速し、若年で閉経に陥ることもあり、喫煙者の方が閉経が早いことがわかっています。
c.このような障害は不可逆的な部分(禁煙しても元には戻らない部分)もありますが、禁煙することによりさらなる障害の増加を抑えることはできますので、もし今、不妊で喫煙している方はすぐに禁煙してください。これが妊娠への第一歩です。
d.喫煙者は妊娠するまでの期間が12か月以上もかかる率が非喫煙者より20-30%高いという研究があります。つまり喫煙者は妊娠までに時間がかかるということです。
e.喫煙者は流産率が有意に高い。つまり、不妊治療でやっと妊娠したとしても流産する率が非喫煙者より高いということです。
f.体外受精を行っても、喫煙女性の妊娠率は非喫煙者に比べ、平均20%減少します。
g.男性の喫煙も精子へ悪影響を及ぼしていることが最近明らかになっています。男性の喫煙により、精子濃度の低下、正常形態の精子の低下、精子のDNA損傷率の増加などが報告されており、男性も禁煙も重要です。

2.体重因子・・標準体重が望ましい

a.女性不妊の原因の約12%は肥満、またはやせによることが指摘されています。
b.肥満・・BMI(body mass index: 体重kg/身長m2)が30以上の場合は妊娠するまでに時間がかかりますし、自然流産のリスク因子となります。体重を落とすことで妊娠率は上昇します。特 に多嚢胞性卵巣症候群で肥満の方の第一の治療は体重減少です。男性も精子の質がBMIが25以上では低下します。体重が増加しますと、脂肪が増加します。この脂肪組織では女性ホルモンである、卵胞ホルモンが産生されますが、脂肪組織が増加しますと、そこからの卵胞ホルモンの産生増加が生じ、その結果、卵巣からのホルモンの産生を抑制することになります。すなわち、肥満女性の場合、過剰になった卵胞ホルモンがあたかも避妊ピルのように排卵を抑制し、妊娠の確率を低下させます。特に多嚢胞性卵巣症候群で肥満の方の一番の治療は、排卵誘発剤より体重を減らすことです。
c.やせ・・理想体重の15%以上の体重減少は月経異常をもたらし、30%以上の減少は第二度無月経になります。やせ過ぎている人は妊娠しても早産になる率が 高くなります。BMIが19より少なく、月経が不規則な時、体重を増加することにより妊娠率が改善します。やせの場合、充分量のエストロゲン産生が、やせているため脂肪細胞から得られず、性周期は不規則になり、早発閉経になる可能性があります。体脂肪が少ない新体操やマラソン選手では月経不順の人が多いといわれています。
d.ダイエットによる急激な体重減少は治療コントロールの困難な排卵障害に陥ることがありますので激しいダイエットには注意が必要です。
e.最近、1年の間、1週間に4時間以上運動している方の体外受精の成功率が低下するという報告があります。ジョギング、エアロビなどをしている方の分娩率は40%低下しますので、体重を減らしたい場合、運動による体重減少より、食事による方法を考えた方がいいと思います。

3.性感染症(STD)・・感染しないように

a.性感染症にかかれば、骨盤内の癒着を生じ、将来不妊になる可能性が高いことがわかっています。また妊娠しても子宮外妊娠の割合が高くなります。
b.STDとしてはクラミジア、淋病、性器ヘルペス、トリコモナス、梅毒、HIVなどがあります。
c.特に最近増加しているクラミジア、淋病は卵管の炎症や骨盤内の炎症を引き起こし、卵管を閉塞させたり 、卵管周囲の癒着を生じ、不妊の原因となります。
d.日本でも16歳の女子高校生で23.5%も感染しているというデータもあり、この女子高校生たちは将来の不妊症の予備軍であり、今後ますます不妊症は増加していくと思われます。

4.加齢・・若い内に妊娠を

a.近年晩婚化が進み、高年齢不妊が増加してきています。
b.生物学的に加齢により生殖能力が衰えていくことは明らかであり、妊娠の確率が低下するのは加齢に基づく生理的変化です。
c.良好な卵子は若い時に排卵してしまい、質の低下した卵子が残され、その結果、年齢が進むといい卵子が減少するため、受精しにくくなり、不妊につながります。
d.また、加齢により、卵子の染色体異常は増加し、その結果、流産率が上昇します。
e.その他、加齢に伴い、子宮筋腫、子宮内膜症などの発生が増加し、これが不妊の原因となることがあります。
f.35歳、特に38 歳を過ぎると妊娠率は低下します。ホルモン値が正常であっても、年齢の因子の方が妊娠率に強い影響を与えることがわかっています。
g.以上より、年齢により、治療を進める速度も変わって来ます。体外受精も38歳前に考えた方がいいと思います。もう少し経過を見てから、と考えている内に体外受精でも妊娠しにくい状況になっていることがありますので、年齢によっては治療を早めた方がいいと思います。
g.男性も加齢による生殖機能の低下がみられます。女性ほど急激には進行しませんが、徐々に進行し、加齢により精子数なども減少します。

5.精神的ストレス・・ストレスをためないように

a.中々妊娠しない、早く妊娠したい、周囲からの妊娠への期待など、精神的ストレスがあると妊娠しにくいこともあります。高度のストレスによってホルモン産生機能が障害され、排卵が抑制されたり、卵管攣縮や造精機能が低下することが報告されています。
b.基礎体温表に細かく1日のことを書いて、1日中基礎体温表に向かっているのではないかと想像させる方もいますが、ストレスを軽減するヨガ、アロマセラピー、その他の趣味などを取り入れ、妊娠のことを忘れる時間を持つことも大事です。不妊カウンセラーと話をすることも気持ちを楽にするのに有用です。当院では2人の日本不妊カウセリング学会認定の不妊カウンセラーがおりますので、お気軽にご相談下さい。

6.性交の回数とタイミング・・2-3日毎の性交

精液所見が最高の状態になるためには3-4日毎の性交がいいとされています。自然妊娠率は2-3日毎の性交により一番高くなります。精子は女性の生殖器官の中で最高7日間まで生存します。基礎体温や尿中LHのチェックだけでは自然妊娠の機会を改善することはありません。しかし、頻回の性交が難しい場合には尿中LHは役立つかもしれません。・・イギリス産科婦人科学会ガイドライン

7.アルコール

妊娠を希望している場合は一度に飲むアルコールに関しては、ビールに換算すると中瓶で1または2本以上、または週に2度以上は飲むべきではありません。男性はビール中瓶で1日に3-4本までは妊孕性には影響は与えないようです。しかし、過剰なアルコール摂取は男性ホルモンの働きを低下させるとともに、精子の質を低下させることも知っておくべきです。・・イギリス産科婦人科学会ガイドライン